ふつうのpixivのつくりかた

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オンラインZoom会議で開催された『【PHP Tech Talk】PHPの今を語る!4社合同勉強会』で15分枠として発表しました。

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スライドテキスト

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ふつうのpixivのつくりかた

An introduction to building pixiv for ordinary PHPers

pixiv Inc.
USAMI Kenta

2023-07-26

PHP の今を語る!4社合同勉強会

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お前誰よ

  • うさみけんた (@tadsan) / Zonu.EXE / にゃんだーすわん
  • ピクシブ株式会社 pixiv事業本部 Webエンジニアリングチーム PHPer
    • 2012年末から現職、APIとかCIとかいろいろなところを見つめてきました
    • 最近はピクシブ百科事典(dic.pixiv.net)も開発しています
  • Emacs PHP Modeを開発しています (2017年-)
  • プログラミング言語にちょっとこだわりのある素人

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PHPカンファレンス沖縄2023

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LLイベント

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   の紹介

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pixiv.netとは

  • “好き”に出会えるイラスト・マンガ・小説作品の投稿プラットフォーム
  • 2007年9月10日に開始
    • 累計登録ユーザー数: 約9300万ID
    • 累計作品投稿作品数: 約1.2億作品 (うち小説1900万作品)
    • イラストブックマーク: 約200億件
  • Web・スマートフォンアプリで展開

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ThePHPF

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OSPO

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ふつう

#とは

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フレームワークが
使われていない

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ただのPHP

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※諸説あります

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諸説ありますが 難しい構造には
なってない

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メタプログラミングは
基本的に
あまりやらない

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(こっそり使ってる 部分もありますが 大筋は追えるはず)

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PHP詳しくない人でも 雰囲気に従って書けば セキュリティの問題は
起こさないように

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pixivのPHP

  • PHPはApache+mod_php (一時fpmを使っていたこともある)
    • nginxからリバースプロキシしてApacheにリクエスト
    • PHPそのものは独自でビルドしてはいるがプレーン
  • DocumentRootにある.phpファイルから処理を辿っていけば全部わかる
  • LinuxとかMySQLとかよくあるLAMPスタックに載っている

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よくある質問

  • フレームワークは使ってないの?
    • 使ってません。マイクロフレームワークのようなものはいくつかある
    • べんりユーティリティの集合でフレームワークに似ているが実態はラッパー
  • フレームワーク/言語の移行やフルスクラッチしないの…?
    • 直近での予定はありません。過去に痛い目にも遭ってるし

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10年前のコードのイメージ

<?php // www.pixiv.net/htdocs/hoge.php
require_once __DIR__ . '/../inc/bootstrap.php';

include_onceいっぱい

include_once INC_PATH . '/Hoge/Fuga.php';
include_once INC_PATH . '/Hoge/Piyo.class.php';
try {
display()

エラーハンドリング

} catch (Exception $e) {

(してないページもあった)

error::exception_error($e);
}

この下にもいっぱい

function display() {

ファイルローカルな

// ...

グローバル関数

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2015年のコードのイメージ

<?php // www.pixiv.net/htdocs/hoge.php
require_once __DIR__ . '/../inc/bootstrap.php';

include_once一個だけ

AppRunner::execute(new Www_HogeController);

このクラスは
自動ロードされる

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2018年のコードのイメージ

final class Controller_WwwRoutes {

htdocs/hoge.phpは消滅

public static function getRoutes() {
$route_map = [
'/' => [
'action' => function () {

URLとファイルは切り離され 

Www_IndexController::main();

マップの一要素に

},
],
'/hoge.php' => [
'action' => function () {

全URLが1ファイルに

Www_HogeController::main();
},

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カンファレンス で発表

PHP 2017

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2023年こうなりたい

<?php // WwwRoutes.php

... ですっきり

public static function getRoutes() {
return [
'/' => Www_View_IndexController::main(...),
'/hoge' => Www_View_HogeController::main(...),
'/.well-known/change-password' => fn() =>

Util_Http::redirect_and_exit(

ReverseRoute::fullAccountsPasswordChange([])
),
],

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コントローラをdispatchする処理

<?php

final class PCAppRunner {
public static function execute(Closure $action) {
try {

whoops

Controller_Util::turnOnWhoops();
Controller_Util::redirectToHttps();

$action();

パソコン版

} catch (\Throwable $exception) {
PCAppRunner::setHttpStatus(500);
Controller_Util::displayWhoops($exception);

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開発しやすさの ための取り組み

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CI
(Jenkins, GitLab CI)

  • GitLabにブランチをpush、MergeRequestを作るとCIが走る
  • PHPUnit、PHPStanと独自の正規表現ベースのlinterでチェック
    • PHPStanは2018年から運用開始
    • 時間帯にもよるけどpushして10分かからずに結果がコメントされる

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PHPで開発しにくいところ

  • 外部入力(クエリパラメータ・フォーム・JSON)の取得・検証
  • PDOの機能の貧弱さ
  • テンプレートエンジンとURLの問題
  • RailsやLaravelにあるようなカッコイイ機能がない
    • かっこいいエラー表示
    • 対話環境/REPL (rails console)

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クエリパラメータの問題

$id = $_GET['user_id'];
if (is_numeric($id)) User_Common::getById($id);

不正な入力です

else error(" ");

  • こういうコードを書いてはいけない
    • クエリパラメータに数字ではない値が入ってくる可能性
    • 入力が空、入力が任意の文字列、入力が不正な数字列、入力が配列
      Mlter_input() をかけると安全にはなるが、それでも面倒

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ParamHelper

$id = ParamHelper::get('id')->asPositiveInt();
$user = User_Common::getById($id);

  • 外部入力から値を取り出すヘルパー
    • クエリパラメータ・フォーム・URL・JSONなどに対応・拡張可能
  • 未入力や不正な入力があると例外を投げる
  • キャッチしてエラー画面を描画する

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ParamHelper

$mode = ParamHelper::get('mode')->asStringInArray['hoge', 'fuga']);

  • ?mode=hoge または ?mode=fuga のみを期待するようなパターン
  • 不正な形式や ?mode=piyo のような期待しない入力で例外を投げる
  • PHPStan拡張で 'hoge'|'fuga' という型をつけている
  • 型安全と実行時安全の両立! (PHPカンファレンス沖縄で話します)

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テンプレートとURL生成の問題

<a href="{$smarty.const.SYSTEM_URL_WWW|escape}member_illust.php?id={$user.id|
escape}">{$user.name|escape}</a>

  • こういうコードを書くと事故が入り込みやすい
    • 純粋にtypoの危険性
    • idなどのパラメータに不正な値を入れるリスク

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→ ReverseRoute

<a href="{reverse_route page='fullWwwMemberProfile' id=$user.id}">

{$user.name|escape}</a>

  • あるページに名前をつけて、reverse_route関数に page 引数で渡す
    • 生成結果は変更前と同じ
    • ルーティングの逆関数にあたるので、一部のフレームワークは
      ReverseRoutingやURLヘルパーなどの名前でサポートしてる

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→ ReverseRoute

/**
* @route\example https://www.pixiv.net/member.php?id=12345 {id: 12345}
* @route\example https://www.pixiv.net/member.php?id=12345&utm_source=xxxxx
{id: 12345, utm_source: "xxxxx"}
*/
public static function fullWwwMemberProfile(array $params)
{
Util_Assert::num($params['id']);

return ReverseRoute::buildUrl(SYSTEM_URL_WWW, '/member.php', ['id'],
$params);
}

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→ Attribute最高!!

#[RouteExample('https://www.pixiv.net/member.php?id=12345', ['id'=> 12345]) #[RouteExample('https://www.pixiv.net/member.php?id=12345&utm_source=xxxxx,
['id' => 12345, 'utm_source' => 'xxxxx'])
public static function fullWwwMemberProfile(array $params)
{
Util_Assert::num($params['id']);

return ReverseRoute::buildUrl(SYSTEM_URL_WWW, '/member.php', ['id'],
$params);
}

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に書きました

blog

https://devpixiv.hatenablog.com/entry/2016/10/25/093000

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PDOの問題

  • SQLは自動生成じゃなくて手で書きたい…
    でもPDOで複雑なクエリを書こうとすると文字列結合が避けられない…
  • PDOで書きにくいクエリの代表例: id IN (1, 2, 3)
  • もう ? を並べてインデックスをインクリメントしながらbindValueはやだ…
    • PDOのクエリのplaceholderに ? を書くか :hoge で書くか問題
    • 型チェックできるように書くのもちょっとめんどう
    • だからテンプレートエンジンを作ろう → PxvSql

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PxvSql

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PxvSql

  • 文字列結合を一切やらなくてもクエリが書けるようになった
  • 実行時に型検査をするのでnullなどの不穏な値は入り込まない
  • エラーチェックのボイラープレートがグッと減る SQLi(脆弱性)のリスクなし
  • :hoge@int で整数の埋め込み、 :fuga_ids@int[] で複数の整数を展開
    する %if や %for の記法で条件分岐や複数SETなども可能

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PxvSql

  • 問題意識はQiitaに書いた

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TetoSQL

  • tadsanが個人の責任で再実装したバージョン (PHP≧5.4)
    • https://github.com/BaguettePHP/TetoSQL
  • 記法を自由に拡張できるように作られている
  • 各社で必要な記法や型を柔軟に実装することも可能!

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PDOのラッパー

  • これは、少なくとも2011年以前からあった仕組み
    • 書き込み用(master)と読み込み用(slave)を明示的に分けて利用可能
    • slaveにINSERTやUPDATEなどのクエリを発行しようとすると例外
  • 全クエリにSQLのクエリ単一行にして、トレースをコメントにして埋め込む
    • スロークエリのログにどのコントローラに起因するか集計しやすいスロークエ
      リを一覧できるビューアーもある
    • 最近ではDatadogのAPMを使えば不要になるかもしれない

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新機能のリリース時にどうする?

  • A: 新機能が実装されたブランチをリリースするときマージする
  • B: リリース前にあらかじめマージして、実行されないようにしておく
  • よくある問題
    • Aは機能の規模が大きいとビッグバンマージを引き起こし、
      予期せぬ問題を引き起こすことがある (コンフリクト解決が大変)
    • 理想としてはBで、一般ユーザー向けに実行されないとしても
      鮮度のよいうちにマージしておきたい (リリース時の変更を最小限に)

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機能の有効化/無効化

if ($_SERVER['REMOTE_ADDR'] === OFFICE_IP) {
hogehoge();
}

  • 新しい機能をサービスに実装して、社内でだけ有効化したいとする
  • 無造作にこんなコードを書かれると後から意味不明になるそもそも社外と社
    内での挙動が別物になるので嫌な予感しかしない

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フィーチャートグル

if (ABTest_DevToggle::isEnabledDevToggle('hogeFunc')) {
hogehoge();
}

  • 専用のコンソール画面でボタンを押すことで有効化/無効化される
  • 設定を一行足すだけで一般ユーザーに対してリリースできる
    • リリース後に障害などが発生しないことが確認できたらifを消す
  • 元はA/Bテストのための機構だった (一般ユーザーに対して確率で適用)

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まとめ

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何もない野原に秩序をつくる

  • べんり機能を導入すると、部分的に生産性が体感で数倍になったりする
    • 一からサービスを作るとしたら同じことを繰り返せるかは、悩む
    • いまならLaravelを入れるかもしれないが、それは未来人だからできる発言
    • サービスの価値はコードではなく、その結果のユーザー体験
    • フレームワークがなかったとしても、
      pixivが2007年からユーザーに価値を提供してきた結果は変らない

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まとめ

  • 今回の内容はPHPカンファレンス関西2018で発表したスライド
    • 2018年以来、良くも悪くもAPIが非常に安定している
  • そろそろPHP 8.2に全面移行できるので、次のスタンダードを考えたい
    • AttributesはPHP 8に全面移行できていなくても使えるので先行導入
  • pixivで開発者体験と安全性のフォーカスしたアプリケーションを
    いっしょに開発していきましょう!!!!

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続きは で

Web

あと

( WEB+DB PRESS)

  • pixiv FANBOX @tadsan
  • pixiv inside
    • で のユニットテストの書きやすさを劇的に改善する手法
      DocComment PHP
    • 連載『 大規模開発入門』を振り返る
      WEB+DB PRESS PHP
    • の基盤ノウハウ大公開! カンファレンス 登壇レポート
      pixiv PHP 2017

Page 49

続きは で

Web

あと

( WEB+DB PRESS)

  • Qiita
    • 憂鬱な のためのアレ、または と仲良くして枕を高くしてねむる

SQL PDO

  • の誤解
    PSR
  • インスパイヤされて掲示板を作りたくなったシリーズ
  • って書きたくない僕たちのためのオートローディングと
    include Composer
  • GitHub
    • やエラー処理の例
      whoops https://github.com/zonuexe/wdb-php-96-sample

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続きは で

Web

あと

( WEB+DB PRESS)

  • これ一冊を購入すれば歴代の 連載が全部

PHP

読めるのでおすすめ

  • まとめ

https://inside.pixiv.blog/tadsan/3991

  • 今回の内容に近いものだと
  • vol.81, vol.87, vol.91, vol.94, vol. 96
  • 買って読んでね! にサンプルコードもあるよ

Web